藤崎竜 ー 封神演義(全23巻)

封神演義』(ほうしんえんぎ)は、集英社週刊少年ジャンプ』に1996年28号から2000年47号まで連載された藤崎竜による漫画作品。中国の古典怪奇小説封神演義』を原作としている作品。

殷から周への歴史の移り変わり…そしてその裏に潜み歴史を操る謎を打ち破るまでを描き、それを23巻という短い尺でまとめあげた事に定評のある作品。

…でもすげぇ皮肉な作品やと思う。主人公達の行動、誰かの死さえ全てが、封神計画っていうシナリオ通りに動かされていただけという真実… 。歴史を裏で操っていた黒幕、女媧(ラスボス)を倒して自由を手に入れたその瞬間、物語が終わりなんやからね。女媧が死の間際に発したこのセリフ…



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これが全てを物語っていると思う。藤崎竜の哲学そのものなんだと思う。

正直、せっかく魅力的なキャラがいるんだからもっと活躍させて欲しいし、女性キャラと乳くりあってるシーンを書いて欲しい。でもそこは作者の哲学があって曲げられない鉄の掟がある。だから切ない!

邑姜のこのセリフ…
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読み返してみると彼女は全てを知ってたよね。戦争が終結して自分は周の武王に嫁ぐってこと。そこに自分の感情を挟む余地はない。ここで運命を打ち破ることがテーマの作品の中で運命に身を委ねる邑姜というヒロイン像が浮かび上がってくる…。しかし最終ページで結局、史実通り邑姜は武王の子を産んだことが明かされる。



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でもここで敢えて邑姜の名前を出す必要ある?しかもここでは『ただしこの話の続きが史実と同一とは限らない』ってかかれてんねんで!これは確実に作者が邑姜がこの作品のヒロインであるという事を示唆していますよ!(力説)それなのに邑姜をヒロインと認識してないアホなファンの多さよ!
…本来なら武王の手篭めにされる直前で太公望が四不象に乗って現れて邑姜を連れ去る。これが終わりでもいいんだよ。でも作者は見開きで抜けのいい風景でバンっと「導はなくなったのだから」…この美しさを取ったのよね。これが名作たる所以ですよ。その切なさをみんな汲み取ってあげるべき。邑姜大好き。