OGRE YOU ASSHOLE 全作レビューっぽいもの

最近このバンドを一生懸命聴いていた。初期のusインディー期もいいし、homely以降のミニマル路線もいい。homelyが最高だと思っているけど、この機会にちゃんと聴いて俺の一枚見つけてみようと思う。

 

オーガユーアスホール(2005)★★★★☆

小室哲哉所有スタジオで吉本興業から発売されたという謎の1st。音は確かに勝手が分からない感じが伝わって来るがまぁ、そんなこんなも補って余りある曲の良さがある。よく比較されるがこの頃は特にスパルタローカルズっぽい。

 

平均は左右逆の期待(2006)★★★★☆

割と自由にやってる曲が多い。後回しでもいい。一曲めが地味に面白い。BECKっぽい。

 

アルファベータvsラムダ(2007)★★★★★

定番ですね。取りあえずこれ聞いとけば間違いない。モデスト・マウスやペイブメントに影響を受けたテレビジョン的ツインギターの絡みが生むヘンテコグルーヴのオルタナという割と王道なジャンルの中でも日本ではこのアルバムが今でもトップ。サカサマの張り上げるサビメロとそれに抗う捻くれギター、これこそ初期オウガって感じ。ただこういうのばっか聴いてると疲れるのも事実。

 

しらない合図しらせる子(2008)★★★★★

このアルバムまでが彼らの初期と捉えるべきか。表題曲しらない合図しらせる子は彼らの中で最も良い曲と思う。名曲って必ず実際鳴ってる音以上のイマジネーションが聴いてる人の中で巻き起こって感動が倍から押し寄せるそんな物だ。このミニアルバムは他の曲もいい。

 

フォグランプ(2009)★★★☆☆

何となく自分の中で一番存在感がなかった時期。ロックファンの間での認知は広がるもバンドの勢いは失速していた感じがした。この時期同世代のバンド(ノーベンバーズ、ピープルインザボックスなど)はみんな変革の時期でしたね。中でもいち早く成功を収めたのはノーベンバーズのミストピアでしたね。翌年にピープルがファミリーレコード、その翌年にオウガがhomelyを発表というのは自分の中で何か一連の繋がりがあります。しかし、この頃のオウガはhomelyのような方向性もまだ見えてないし、初期のようなインパクトもなくなっていました。そんな中ラストに収録されたワイパーは彼等にとって転機となった。クウウトロックに影響を受けたループするギターフレーズの中で開放感が増幅されていく様子は世間の喧騒などどこ吹く風という感じ。

 

浮かれている人(2010)★★★★☆

初期メンバーではラストの作品。次のhomelyで確変が起こるのですが、実はこの作品で既に変化の芽は芽吹いている。クウウトロックの影響を感じさせつつポップなコーラスによるハッピーな雰囲気が特徴的なアルバム。このアルバムには初期ともhomely移行とも違うここだけの魅力がある気がしなくもない。ホームリーの他にもう一枚選べと言われたらこれかも。

 

homely(2011)★★★★★

大名盤ですね。オルタナティブロックからクウウトロック、ソフトロック、AORの方に華麗なる転身を遂げたアルバム。これ以降この路線がずっと続くのだが、このアルバムが他のアルバムより優れているのはその風通しの良さにある。女性の語りが入っているのが渋い音楽性を中和していて爽やかで良い色気を出している。なんと言ってもアルバムのコンセプトがこの時期の彼等にピッタリハマっていた事が重要だと思う。「居心地が良くて、悲惨な場所」これは当時の彼等が狭い音楽業界に押し込められる窮屈さを感じていて、しかしそこを離れると自由は手に入ってもとまともに暮らしていけるかさえも分からない…もしかしたら底なしの堕落が待っているかもしれない。そんな心情がこの浮世離れした世界観をリアルに浮かび上がらせている。だからこのアルバムがこんなにも響くんだろうな。ひょっとしたらこのアルバムが駄目なら音楽家として終わってもいいという気持ちだったかもしれない。これ以降のアルバムは音は継承してるけどその辺がヌルいよな。このアルバムはベースが抜けてギターの馬渕氏が弾いてるらしい。ベーシストとしては初心者故にやや事務的な感じに聴こえるがこのアルバムに関しちゃそれが逆に良かったかもなぁと思ったりする。

 

100 年後(2012)★★★☆☆

このアルバムは嫌い。ホームリー以降の音でしらない合図〜みたいな良い歌を作りたかったんだろうけど聴いててめっちゃダルい。素敵な予感みたいなミニマルファンクは面白いけどやっぱ長いね。もっと楽しめる工夫がほしい。

 

ペーパークラフト(2014)★★★☆☆

canで言えばfuture days以降みたいな音楽性。女性コーラスも復活してるけどここではもう色気が失われて巫女的な役割に留まっている。うーん悪くないけど、こうなってくると出戸くんのボーカルだと主張が強すぎるような…。山本精一みたいなボーカルなら違和感なさそう。canもダモ鈴木みたいなヘタウマで丁度いいし。隙がなさ過ぎて聞いてて疲れるという印象。

 

ハンドルを放す前に(2016)★★★★☆

前作がスタジオワーク主体の音楽だったのに対してこのアルバムではバンドサウンドに回帰したというような事を語っていた。まぁでも感触として前作と殆ど変わらん。シンプルな演奏でこっちの方が多少聴きやすい。でもこれやってる事ほぼ後期ゆらゆら帝国なんだよなぁ。

 

新しい人(2019)★★★★☆

現時点最新のアルバム。音数が減ってどんどん虚無ってきた。talk talkみたいな。それでも音楽的アプローチを変えてきただけで敢えてこうしなければならなかったという必然性は感じない。

 

俺の一枚は"homely"に決定しました。
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まぁおおよその予想覆らずといった感じ。

このアルバムは奇跡起こってるからなぁ。結論としてこれ以降のアルバムは凄いっちゃ凄いけどつまらないっちゃつまらない。初期はたまに聞きゃいいし、ずっと聴いていたいのはこれ。