DIIV - deceiver (2019)


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アメリカのインディーバンドDIIVのサード・アルバム。2010年頃、ディアハンターやヴァンパイアウィークエンドといったバンドが幅を利かせていて世の中はちょっとしたインディーブームであった。その中に彼らDIIVもいた。時代に呼応した鮮烈なデビューから1st、2nd、3rdと着々と人気を落としてきた彼らであるがこのサードアルバムが彼らの最高傑作であることは疑う余地がない。然し乍ら各種雑誌や音楽サイトの2019年の年間ベストにはDIIVのダの字も見つからない。これは非常に遺憾である。…なので、ここはちょっとした抵抗を見せておかねばなるまい。

このアルバムの内容について簡単に説明するとソニック・ユースマイ・ブラッディ・ヴァレンタインといった所謂シューゲイザーと呼ばれるジャンルの中でも取り分け暴力的な音像を持つバンドに影響を受けた作品で、まぁ全然新しくも何ともないので実際ランキングに食い込んでくるような作品ではないんだが、その楽曲のクオリティの高さには眼を見張るものがある。これ以前の作品は作曲が全てフロントマンのザカリーコールスミスの名義であったが今回は全てバンドの名義となっている。それがあってかアンサンブルの素晴らしさ。各種パートの練り込まれたアレンジ。飽きのこない捻りの効いたソングライティング。それに加え以前からの美メロそして暴力的な轟音が見事に融合を果たしておりどの楽曲も聴き応え抜群。捨て曲なしの名盤に仕上がってる。

そもそもこんないいバンドだったっけ?当時も聴いたことあると思うけど全然印象に残らなかったというのが正直なところで今回これを機に聴き返してみた所、以前からソングライティングは素晴らしいセンスを持っていたことが分かった。しかし1stは歌が弱い。そういう狙いもあるだろうがはっきり言って雰囲気物で終わってしまっている。セカンドは歌の部分が大幅に強化されたがその分アルバムコンセプトにこれといったものがなく全体の纏まりに欠けていた印象(曲も無駄に多い)。…以上のことを踏まえこのアルバムがバンドの集大成として最高傑作の高みに君臨しているのは揺るがない事実だ。しかし、一つ気がかりな点を挙げるとすればアルバムコンセプト。マイブラソニックユースのような不協和音を用いた歪な音像をオルタナ寄りのポップソングに昇華するというスタイル。これは実はこのバンドが最初ではなくて、ドロップナインティーンズやスワーリーズといった90年代のバンドが同様の事に挑戦している。しかしこうした音楽性はオルタナなの?シューゲなの?グランジ?てゆーかあんたら何がしたいの?って感じで正直人気があるとは言えない(勿論これらのバンドが好きな人には超オススメ!!)。

個人的には大好物であるが世間的には1stのような爽やかシューゲが人気なんだろうな。こうなってくると本当にみんなマイブラとかソニック・ユースとか好きなのか?という疑念が湧き上がってくる。何にしても右高上がりで実力を上げてきているバンドに評価が追いつかないのは悲しいことだ。