昨夜のカレー、明日のパン(2013)

テレビドラマの脚本家木皿泉の小説。結局ドラマ化もされてるんだね。木皿泉のファンなので内容はすげえイメージしやすかった。銀杏が一本生えた家というロケーションが連ドラっぽい…流石脚本家だな。

この人の作品に触れると心洗われる…というか人間って本来こうあるべきだよな。こうあろうと努力してるんだよなここに出てくる人達はって思う。人間ってこんな良い人ばっかじゃないやろ。もっと怖い人もいっぱいいると思うけど、登場人物はみんなそういう場所を避け遠のく事を選んでいる。そういう人間的なずる賢い部分が描写されてるのは木皿作品で初めて見た気がする。(…いや、そういえばすいかも実家から離れる話か)

そうやって居心地のいいユートピアを見つけるのが大事なんだが果たしてそのままそこに居ていいのかってのがメインのテーマだわな。

ユートピアとは自分が自分らしく生きる為の場所だ。それは楽するとは微妙に違う。毎日楽でも目が死んでたら意味ないってことで、そのためなら寿命が縮んでもいいとさえ考えていらっしゃる。

果たして自分のユートピアを見つけられた人がこの世界にどれだけいるのか。思い返せば木皿作品ってどれもユートピアを築いてそっから自立したり失って再びそれを取り戻したりする話で、そういう部分に物凄く拘って作ってる。ユートピアの裏には苦しんでいる生きている人々の影が見え隠れし、木皿泉作品ではいつもその人達への遠慮を感じる。その奥ゆかしさが木皿泉の好きなとこかもしれんな。