北国の帝王(1973)


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ロバート・アルドリッチ監督作。

1930年代大不況下のアメリカを舞台に、職を求めて鉄道の無賃乗車で放浪を続ける浮浪者(ホーボー)と無賃乗車犯を追い払う車掌との対決を描く…とのこと。

最初の車掌にホーボーがやられて轢き殺されたとこでめっちゃ陽気な音楽がかかるOPでめっちゃ笑った。列車に乗るホーボーは容赦なく殺す。治外法権甚だしいがこれに近いことが実際この時代はあり得たんだろうなって思うと日常の中の非日常感にワクワクする。昔の人の仕事は楽勝やったとミルクボーイが漫才のネタで言ってたが、なるほどこれだけ単純な世界ならある意味納得。

キャラクターは単純なんだけど話は意外と複雑。先ず、鉄道員とホーボーって勢力があるんだけどどっちも小汚いおっさんで見分けがつかない。おまけにどっちが善人悪人とかもないからZガンダム並みに分かりづらい。全員汚いから最初は誰が主人公かも分からなかった。あと、今何をやってるのかも説明がないので分かりづらい(特に霧のとこ)。この作品の場合、この単純な話をこれだけ複雑に描けるのだからそこが逆に魅力なのだが、まぁ…何となく分からない所は流しながらも細かい情報を取り逃がさないという映画根性が問われる作品だ。

結局のとこ破天荒な男と若いホーボーの師弟関係を描いた物語なのかと思いきや最後のオチで笑った。

古い作品なのに人間を物語を動かす為のコマとして扱うのではなく一個人として描いているのが凄い。馬鹿っぽい設定なのに人々の生活が息づいているのを感じるし、見れば見るほど奥深い作品だ。

正直、音声解説がないとイマイチ理解できなかった。つまりこの作品は先ず普通に見て、次に解説見て、次に解説を踏まえた上でもう一回観る計3回楽しめる。3回観れるってことは何回でも見れる。つまり名作ってことだ。