ブーゲンビリア ー 小路啓之


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漫画家小路啓之の短編集。有名なのは千原ジュニア主演で実写映画化したごっこかな。大きなヒット作はないけどカルト的な人気を誇った漫画家なんだと思う。46歳で若くして亡くなった。確かに早死しそうな頼りない筆致。恐らく定規とか全く使ってないんだろうな。物凄く絵が上手い。変幻自在のパース。リアリティに拘らない自由に描かれたキャラクターと少女漫画家みたいにインテリアまで拘った丁寧さを併せ持つ。絵柄は魔法少女隊アルスの絵に似てる気がする(ドレミとソレミは特に)。

内容については発想が半ばえろ漫画。同人作家的なメンタリティを感じる。作品って普通世の中に向けて描いてるもんだけど、二次創作とかって作品と作家の間に産まれるものだよね。だから自分の内へ内へ向かってる。この人の漫画はそれと似た雰囲気がある。それが悪いとは全然思わない寧ろピュアで好きだな。売れないと思うけど。

どれもすごく面白かったけど、特にファミリービジネスとブーゲンビリアが好きだな。ファミリービジネスの全く予想のつかない、産まれたての赤ちゃんみたいな一挙手一投足が新鮮さに満ちたこの空気感が好きだな。ブーゲンビリアは特に少女漫画っぽい。岡崎京子須藤真澄高野文子当りを彷彿とさせる儚い雰囲気(同時に弐瓶勉っぽくもあるような

…)。なんつーかオルタナとかインディーとかの若者のロックの雰囲気がする。僕と君だけの閉ざされた幻想的な世界。倫理観とか要らねーんだよっていう。まぁこんなん書いてる人は普通の人みたいには生きていけないだろうな。