Sister Paul - RIDE MY MOTORCYCLE(2005)


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日本のスリピースロックバンドシスターポールの4枚目のアルバム。このアルバムは前作、前前作に比べてギターの音が落ち着いていてシンプルで生々しくていい。つーかあんまレコーディング費用が無かっただけだと思うがそれが結果いい感じになってる。ギターは本作で脱退することもあって、やる気がない感じもするが引き出しの多さは流石で寧ろ過去作に比べて一番自由に弾かせてもらってる印象がある。この空中分解しそうな空虚な雰囲気は嫌いじゃない…寧ろ一番の名盤だと思う。

シスターポールといえばロックンロールを基調としたシンプルなパンクロックに退廃的な男女ツインボーカル乗るバンドなのだが、何故かハモリの高音と低音が男女逆なのだ。その性倒錯的なツインボーカルが生み出すロマンチックな虚構としみったれた現実を行き交うペシミスティックなユーモアが支配する世界観は彼らの最大の魅力。ルー・リードやボウイ、最近ではdeerhunterとかに近いかな。音楽的にはもっとシンプルでポップではあるが何故か雰囲気的にキャッチーでなく…アンダーグラウンドな匂いが漂う。それが行き場のない気持ちを抱えた人間にはどうしょうもなく響くのだ。この美意識は年を経る毎に磨きがかかっていると言える。正に生活全てがロックンロールそんなバンドだ。

1.乗り物はオートバイ

間髪なく始まるシンプルなロックンロール。自由を愛する男のフィーリングが見事に抽出された情景描写。火が出るようなギターソロ…からの静かなブリッジ部分に繋がる構成が美しい。2分半で駆け抜ける見事なポップソングだと思う。

2.空に浮かぶあなた

これまた間髪なく耳に飛び込んでくるシンプルなロックンロール。こちらは歌詞がよくわからないが、繰り返される誰も見えない僕だけ見えるというフレーズが美しい。このアンニュイな曲を表すギターソロも見事。

3.My Sharona

シスターポールお約束の超有名曲カバーシリーズ。原曲に忠実だと思う(知らんけど)。とりあえず最高。

4.二十歳のママン

シスターポールの真骨頂。ヤバめの変態ソング。最初再婚相手の義母に恋をする男の子の話かと思いきや、よく聞くと赤の他人のストーカーっぽいんだよな。しかもそいつはその女の装飾品を盗んで身につけて外を出歩くのが趣味というド変態っぷり。彼女を愛するあまり彼女そのものになりたいという感情を歌っているヤベー奴。こうしたテーマは他所ではRADWIMPSの代表曲25個目の染色体なんかでも取り扱われてるけど割とポピュラーな性癖なのだろうか。

5.ロマンス

「お前に足りないのはロマンスだ」と説教臭くも人の真理を突くロックンロール。こういうのロックではよくあるよね例えばと言われても知らんけど…。

6.カラーテレビジョン

彼らの中では珍しく変拍子の捻くれたユーモアたっぷりのパンクロック。ここまで似たような曲が続くがロックなんてそれでいいんだよ。

7.ロンロンカーリーヘア

パンク調の曲たちを経て可愛らしいポップスに変化。フレンチポップ的な曲調も似合うシスターポールの幅広さに注目。歌詞的には上京してきたカップルの男の方だけ馴染めなかったみたいな木綿のハンカチーフ逆版みたいな雰囲気がある。

08.5分経過

味気ないタイトルだがギターのコード感が光るミディアムナンバーでめちゃくちゃ好きな曲。シスターポールはファストチューンが得意だが、何気にミディアムからスローナンバーがどれも名曲だと思う。

09.コツコツ天使

小気味いいコードリフが光るオルタナパンクの名曲。ここまで殆どの曲で共通するがシスターポールはタイトルを連呼するリフレインの使い方が非常にうまい。タイトルだけでワクワクするしセンスが良い。ここでは曲調に合わせてバーストしないギターソロが上手い。本当にいいギタリストだなと思う。最終曲にしては余韻なく終わってしまう簡潔さ。9曲という尺も相まって何度も繰り返し聴いてしまうアルバム。