MC5 - kick out the jams(1969)


f:id:godmanzanera:20210502014828j:image
FBIにマークされたバンドとして、その反社会的ポジションを取り上げられる事が多いバンドだが、そこは敢えて無視してこのバンドについて語りたい。

デトロイト出身5人組ロックバンド。60年代後半から70年代初頭にかけて活動し、同郷のストゥージズと共にパンクの始祖と言われ若いバンドから指示を集めている。聴けば分かるが、代表曲のkick out the jamsも「ジャムってる奴ら退け」って意味でパンクの性急さが伺えて素晴らしい。…しかしMC5の音楽性はパンクだけに留まらない。ロックンロールのみならずブルースそしてフリージャズを飲み込み自分たちの物にする音楽性の高さはオルタナティブロックの元祖と呼んで差し支えないのではないか。その中でもツインリードギターというのはこのバンドの大きな特徴で、激しく主張しぶつかり合い…時にはセクシーに絡み合うギターはテレビジョン等の後のニューヨークパンクを彷彿とさせる。

このバンドの評価がイマイチパッとしない理由はその取っ付きづらさにある。というのもファーストアルバムがいきなりライブアルバムで内容もパンクと言うにはあまりに演奏が上手く難解で、ストゥージズみたいなのを期待すると肩透かしを喰らうというわけだ。レイジ・アゲインスト・ザ・マシーンやアット・ザ・ドライブイン(ボーカルがアフロなのも似てる)などのエネルギッシュなオルタナティブロックバンドをイメージして聴くと良い。後はビートルズとかかな…。とにかくイマジネーションの次元が非常に高度なバンドだ。現代に登場していても余裕で天下をとれただろ的な…。それくらい彼らの音楽はモダンで普遍性がある。

https://youtu.be/74jS3dW0DtE

やはり最初はライブ映像を観て全容を把握してしてからアルバムに入って欲しい。ステージ下手側で暴れている音も動作も派手な方がウェイン・クレイマー、上手側で地味に弾いてるのがフレッド・ソニック・スミス(パティ・スミスの旦那)。ツインギターの場合、地味な方が実はバンドの核を握っているという事はよくあることだが、彼がMC5解散後に結成したソニック・ランデブー・バンドも味なロックンロールバンドでなかなか乙なものだ。フレッドのボーカルはイヴァン・ダンドゥに似ている。


f:id:godmanzanera:20210502002318j:image

Kick out the jams(1969)

MC5が残したアルバム3枚は全部名盤だがその中でも名盤と名高いファーストはどぎついメッセージ性と暴力性をこれでもかと詰め込んだ内容で名曲揃いなのだがいきなり彼らのハードコアが垣間見え過ぎてやはり初心者には少々キツい…。音質も少しボヤっとした印象。当時の録音技術で彼らのエネルギーを全部閉じ込めようと思ったらライブ録音という選択は正しかったと思う。



f:id:godmanzanera:20210502004546j:image

Back In The USA(1970)

このアルバムが一番好き。前作のボヤっとしたイメージを払拭すべく発表した彼らの名刺代わりの1枚。コンパクトでソリッドな楽曲群は正しくパンク。https://youtu.be/eU4zWc_6VeA

しかしそのキャッチーさが災いし前作の攻撃性はどこに言ったとファンには不評だったというのはなんとなく頷ける話。この辺の意思疎通の取れてなさが彼らの評価の妨げになっているように思う。内容としては尖ったロックンロールが好きな人には売ってつけの一枚。


f:id:godmanzanera:20210502004440j:image

High Times(1971)

前作から正当進化した一枚でファンの間では最高傑作という呼び声も高い。彼等の雑多な音楽性が上手く作品に結びついていて聴きごたえ抜群。ラストのskunk(sonicly speaking)なんかソニック・ユースかと思った。https://youtu.be/kLhe5n4RQYM

エキサイティングなドラムに幾何学的なギターの重なり。そこにブラスを持ってくるセンスが秀逸な名曲。この曲は作曲フレッドスミスなんだね。ロックレジェンドに数えられててもおかしくない彼らだが、メンバーも割と早くに亡くなっていて時代を掴み損なったというような寂寞とした空気が漂っている気がする一枚。