罪と罰ドストエフスキー(工藤精一朗訳)

面白かったー。

ドストエフスキー久々に読んだんで読み味を忘れてたけど、そういえば普通に面白い話を書く人なんだよな。

ドストエフスキーって名前が良くないんだろうな重苦しくて。

意外と映画的なんだよな。文学的ではない。沁み沁みさせるより割とドカッと感動が押し寄せるタイプ。

3回泣いたね。

ヒロインの親父が死ぬシーンとラスト母親に別れを告げるシーンとエピローグでヒロインと結ばれたとこ。

結構感動の種類が違うのよ。悲しみ、怒り、喜び…全部入ってんだよねドストエフスキーは。人間大好きなんだよな。あらゆる人物の解像度が高い。

特におかんのウザさと労働者や飲んだくれのダル絡み再現度めっちゃ高いw。そのすべてが茶化すではない親しみを感じるんだよね。

主人公の人間性ライ麦畑でつかまえての主人公と大して変わらん。まぁエヴァのシンジだってそう変わらんだろう。あらゆるものが気に食わないイライラした若者。俺が思ったのはデスノートに読み味が近いってこと。主人公が悪役で追い詰められていくんだけど何か応援しちゃうっていう。

ラスコーリニコフ夜神月になりたかったんだよね。でも彼は自分のおかした罪に思い悩んじゃう。そこがこの作品のミソなんだけど、そこを中心に見るとやっぱ、主人公がヒロインに罪を懺悔するシーンが一番熱かった。気が弱くて自分を好いてくれそうな小娘を選ぶとこが情けなくてさ。前の彼女もブスらしいしラスコーリニコフは意外と自己評価低いのが分かるよね。そこが月に劣ってたね。

結局何で主人公が人を殺したのかってとこが考察のし甲斐があるところだけど、…まぁムシャクシャしたからやったに他ならないんだよなw。例えば、山上徹也でも夏油傑でもムシャクシャしてやったんだよ。そういう気持ちは誰にでもある。

だからこそ『罪は認めないが、僕がこの二人(母と妹)を不幸にしたのは他ならない』と認めるシーンは凄く等身大でジンとくるものがあった。

そんな彼がラスト、獄中で普通の大人になっていくダサさにまだそういう時期を脱しきれていない読者の俺は寂しさを覚えたんだよな。だって母親たち死んでんじゃん。物語としてはそれ落とし前ついてないよ。でもそういう遣る瀬無さを抱えて人は生きていくんだよってメッセージなのかな…。