フランツ・カフカ ー アメリカ

カフカといえば元祖シュール。シュールはいつの時代も普遍の魅力がある。

時代背景は近代でドイツ人の主人公がメイドのババアを孕ませてしまって怒った両親にアメリカに飛ばされるとこから始まる。主人公はどうでもいいことをたらたら回りくどく説明する有能風無能。何もかも疑ってかかる奴は自分の思い通りに事が進むと気を良くしてコロッと騙されると言うが主人公はその典型。深く考え過ぎて嘘ばっかついて全部裏目に出るというやるせなさ。これまで自分の事イケてると思ってた主人公がいきなり社会に放り出され恥をかくというプレイを楽しむ小説。カフカは100年近く前から共感性羞恥の笑いを創り出している。ほかの作家とは次元が違う(何かがズレてる…!)。世の中を舐めてるし、どうせみんな糞なんだからどーでもいいって感じだ。そのせいで登場人物だいたい糞(…または疑うことを知らない頭お花畑)。ホテルの事件はくっそ胸くそ悪いけど、ドストエフスキー程真っ黒では無く、ユーモアがやっぱどっかにある。ロビンソンのコメディーリリーフっぷりも手伝いどっか憎めん。「おそらく一生涯、片輪者になるくらい、おれはなぐられたんだぜ。」ってセリフが妙に笑えた。ドラマルシェはジョジョ5部臭がすごい。

とにかくどうでもいい事をたらたら書くのでギュッとしたらこれ半分で済むやろと思うけど、忙しい現代社会においてこのルーズさは癒し。ルーズといえばおよそ3年に及ぶ法人所得の無申告で知られる吉本興業所属、徳井義実カフカの世界はチュートリアルの漫才に通じるものがあるかもしれんね。

…それにしても謎なのは最後の第八章

この銀河鉄道の夜感は何なんだ。

これまでリアリティを基調に就職難と社会の厳しさについてみっちり描いてきてたのにいきなり管理社会的なディストピア臭漂うSF的展開になってイミフ…。ファニーって誰やねん。いや…マジで誰?謎すぎて普段読まんのに解説まで読んだけどやっぱり謎やった。

まぁカフカといえば未完の帝王ですからね。完結しない事で逆に無限に楽しめるという考え方ができる。音楽もそうだけどリズムを微妙に外すことでグルーヴが生まれるが、カフカはこの原理を知っている。微妙に甘酸っぱい恋愛に行くと見せかけて全然行かんしっていう…。