Berryz工房…活動後期シングルレビュー

Berryz工房は2004年に結成されて以降、精力的に活動を行い2015年に惜しまれつつ活動を休止した。およそ12年の活動期間内で発表した作品はアルバム9枚ミニアルバム2枚シングル36枚と非常に多くの作品を残している。そのリストを眺める中でラストアルバムBerryzマンション9階(2013作)以降発売されたシングルが6枚もある事に気づいた。しかもそれがかなりの名曲揃いであるという事実。これらのシングルは活動の締めくくりとしてリリースされたベストアルバムにしか収録されておらず、コアなファン以外の耳に届いてない可能性が高く(そんなことない?)ここで取り上げることにした。Berryz工房と言えば活動初期に名曲が集中してるという見解があるがそれが覆る可能性をここで提示しておきたい。

 

31thシングルアジアンセレブレイション

https://youtu.be/C9hVxOVtbxk

この曲は後期を代表する名曲だ。初期で例えるとスッペシャルジェネレ〜ションみたいな位置を占める大名曲だと個人的には思っている。おもっいきりクラブミュージックに寄った作風で、センターを務める夏焼雅がフロアーを煽る様子が描き出されどこか非合法的な雰囲気が漂い始める…。クラブミュージックというだけで拒否反応を示す人がいるだろうし、クラブミュージックとアイドルとの食い合わせは決して良くない。清純なアイドルとのギャップを楽しむというならまだ分かるが、Berryz工房はその逆でモロにクラブミュージックに染まってお立ち台のど真ん中に居座りフロアを支配している様相だ。これはグループの持つ天然のギャル感がなせる技で(ファンの間でスクールカースト上位と喩えられる)他のアイドルグループでは決して真似する事の出来ない大技である。そこまで理解出来るかでこの曲の評価が変わってくるのは致し方ない所であるが、後期はこのBerryz工房にしか出来ない曲というのがキーワードになってくる。つまりこの辺りで彼女らはグループのオリジナリティを完全に物にしたワケだ。

 

32thシングル ゴールデンチャイナタウン/サヨナラウソツキの私 

((ゴールデンチャイナタウン

https://youtu.be/y81Gldfg_fM

アジア→チャイナときてファンはどうしちゃったのBerryz工房と思ったことかもしれないし、つんく♂今こういうのにハマってんだと諦めに似た感情で納得した事だろう笑 前作と同じくクラブミュージックのノリを継承しつつこちらはグルーヴィーなベースとカッティングが目立つ4つ打ちビートのファンキーな曲。前作は薄暗い地下室で意識飛んでる感じだが、この曲は汗臭く踊り狂う様なスポーティな雰囲気がある。

((サヨナラウソつきの私

https://youtu.be/IRsSxKKVM7M

この曲もクラブミュージックっぽいがまたアプローチが違ってダフト・パンクとかそっち系のエレクトロな作風。随所に生ドラムを仕込むなどバンド感を演出している。こういう90年代アニメ主題歌的な曲調は℃-uteっぽいと感じる。

 

33thシングル大人なのよ/一億三千万総ダイエット王国

((大人なのよ

https://youtu.be/0BgGMU9fFOs

恋の呪縛の大人アップデート版といった感じの内容。オタが合いの手を入れる隙がないほどあまりにも見事なパフォーマンス。サビの激しいユニゾンダンスは大きな見所。ファンキーなキーボードやブラスなどの生楽器が目立つ曲だがが4つ打ち基本で踊れる感じは崩していない。徳永千奈美のあどけなさの残ったボーカルが効果的に浮遊感を濁し出している。彼女は全体的に歌唱力が高い訳では無いが独特な声質をしていて随所で効果的に活躍をする場面がよくある。

((一億三千万総ダイエット王国

https://youtu.be/z52Q_ejCUXM

この曲は度肝抜かれた。コミックソングと見せかけて女子にとっては割と深刻な悩みを歌っているが、その悩みをフェミニズムに寄らずまるで壮大な人間賛歌のように錯覚させるパワー。これもまたBerryz工房の持つ圧倒的な個性のなせる技だろう。女子は共感すればいいし、男子は笑えばいいって絶妙な感じに仕上がるのは彼女らだから。変な曲だなーと思ってたが繰り返し聴いてるうちに普通にいい曲に思えてくるハロプロ特有のあれ。

 

34thシングル Rockエロティック/もっとずっと一緒にいたかった

((Rockエロティック

https://youtu.be/yWR68wieltc 

言う程ロックか?っていう…ここで行われてるのはrockエロティックという概念の提唱だろうな。サビの声を張り上げる歌唱から間奏の盛り上がりが聴きどころ。

((もっとずっと一緒にいたかった

https://youtu.be/6AQ5dkGvgwk

バラードにノリのいいビートを乗せるというつんく♂お得意の手法。正直このシングルはどちらもあまり好きじゃない。まぁ打率としてはやはり高い。

 

35thシングル 愛はいつも君の中に/普通、アイドル10年やってらんないでしょ

((愛はいつも君の中に

https://youtu.be/Zslj8xHH-y8


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愛の嵐みたいな漆黒の衣装と影が印象的なMV。ここからは怒涛の名曲ラッシュで一気に格を上げ、グループは伝説と化した…。おそらくつんく♂がダイエット王国でこいつらに壮大な曲歌わせたら面白いと気づいてしまい、それを突きつめたような曲。結果、戸川純のようなサブカル臭漂う前衛芸術集団と化してしまった。往年のスクウェアゲーのような壮大なストリグスを讃えた楽曲に堂々としたBerryz工房の歌がぶつかり合う前代未聞のメッセージソング。一見凄すぎて笑えるんだけど、それを乗り越えた時の感動が凄まじい名曲。慣れた頃に福沢諭吉ばりの名文句が襲いかかってくる。言うまでもなくBerryz工房以外には出来ない曲だろう。

((普通、アイドル10年やってらんないでしょ

https://youtu.be/aYqimX33oUo

この辺になるともう活動のまとめに入ってるなという印象。そしてこれこそBerryz工房にしかなし得ない名曲である。初見なんかもっさい曲やなと思ったけど、Berryz工房の活動を追ってここまでくるとこの曲は涙無しには聴けない。噛めば噛むほど美味しくなる名曲。全パート最高なんだが、やはりももちの「これで良かったと感極まって…」のパートが泣ける。ギャグ100回の時も指摘したけどももちの声ってどこかノスタルジックで時代性を欠いた何かがある。こっちが感極まるわというね。YouTubeのコメで見た考察だがカントリー風のアレンジが施されていたり随所に馬の嘶きが入っている理由に「無事之名馬」という言葉があって怪我なく無事に走り続ける馬は名馬であるという意味らしい。Berryz工房は12年の歴史で1度もオリコン1位を取る事が出来なかった。しかしこれだけ歪な形て走り抜けたアイドルグループは他にいないしその事実が全てを表している。それに符号してこのアレンジが施されたというのはとても面白い話だ。この泥臭さ。それまでも魅力に変えるのはやはりBerryz工房だけ。

 

36thシングル ロマンスを語って/永久の歌

((ロマンスを語って

https://youtu.be/vJ_Ps_yhoUE

ラストシングル。活動休止発表を経てリリースされた経緯もありこれはつんく♂からグループへのプレゼントだね。こんな可愛い曲今まで中々やらせて貰えなかったからね笑(笑っちゃおうよBoyfriend以来か…) つんく♂の持つグルーヴ感にTheアイドルっていう往年の歌謡曲を煮詰めて醸成したものだけを集めて散りばめたような名曲。アイドル10年がアイドルのリアルを描いているとすればこちらはアイドルの理想を描いている。本当に最初から最後まで完璧なポップス。それ故にBerryz工房のキャラクター性は薄めだが純粋にアイドルやってる彼女らが観られて良い。

((永久の歌

https://youtu.be/U0URL_-LDqI

まるでBuono!のような生ドラムのロックナンバー。つんく♂はまだこんな普遍的な名曲が作り出せるのかという驚きがあった。やればいつでも出来るけど今までやらんかった切り札ってかんじか。この曲飛びっきり爽やかで前向きな曲調とは裏腹に過去の事を歌ってるんだよね。でもそれは次の1歩を踏み出す準備の為…。未来の為の身辺整理のような曲。これまでの自分に恥じない生活を送れば綺麗な思い出と今の自分は地続きでそれは永久なんだよってメッセージだと解釈。過去と未来の邂逅そこに永久がある…いや僕も何言ってるか分かんないです。

 

((Love together!

https://youtu.be/1M9TJpLTcw8

そしてこれがベストアルバムだけに収録されたBerryz工房の本当のラストナンバー。ロマンスを語ってと永久の歌とはまた違う…今度は随分距離の近いしっとりとしていて切ないバラード。ラストナンバーなのにユニゾンが少なめな構成もまた切なさを倍増させる。メンバーが直接語り掛けてくるようなこの距離感は、どうしたって休止が悲しいファンの気持ちに寄り添う為か。しかしこの曲の存在自体がBerryz工房の不在を訴えてくるような…そんな理由でファンにとっては辛い1曲。曲としては本当よくできていてバラードながらビートが効いていてカッコイイしこれはジャンルで言うと完璧にエモやね。つんく♂はまだこんな良いメロディーを隠し持っていたのかと驚いた曲。よく出来すぎてつんく♂らしくないような気さえする笑 完成度の高さでいえばそれこそデビューシングル「あなたなしでは生きていけない」以来じゃないか?てゆーかあななしとlove togetherってタイトルが呼応してるね。そこら辺狙ってんのかも。…くっそいい曲やけど、Berryz工房の為に作られた曲でBerryz工房しか歌う資格のない曲だからハロプロ内のカバーとか無さそう。

 

…活動後期は両A面が非常に多く、シングル6枚の内5枚は両A面である。つまりカップリング等も含めて余裕でアルバムをリリースできるほどの曲量は揃っていたのだ。しかもその質を考えると、もしそれがリリースされてたらグループの最高傑作になっていたことは間違いないし、もしかしたら日本の音楽史に残る歴史的1枚になったかもしれない…というのがこの記事の中で最も重要なポイントだ。この頃つんく♂が患っていた病、死も意識したはずだしそれを考えるとこの土壇場での頑張り…どれ程Berryz工房に愛を注いでいたかが窺える。