藤本美貴 - miki①(2003)


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ハロプロのソロ歌手としては松浦亜弥に次ぐ存在感を放つ、庄司の嫁ミキティこと藤本美貴のファーストフルアルバム。このアルバムが出るひと月前にモーニング娘。への加入が決まっていたのでこのアルバムはファンへの置き土産的な意味があったと思われる。

モーニング娘。の中では断トツでミキティの歌が好きで、自分にとってモー娘はミキティの声を聞く為にあるようなものだった。ミキティの歌唱についてグループで映える声という評価をよく耳にするが、そんな事ないだろ!寧ろ全編ミキティでいい!と思っていた自分としてこのアルバムを聞くことは非常に楽しみであった。

…いざこのアルバムを聴いてみたところ若干肩透かしを食らった。その批評も納得せざるを得ないというような事を思った。

その理由としてこのアルバムにおいてミキティにはアーティストとしての主体性が感じられない。

歌唱力には全く文句がなくどんな歌が来ても歌いこなしてやるという自信を感じるが、逆にこういう歌は苦手とかもっとこういう歌を歌いたいというようなアーティストに大事なエゴが欠落しているのだ。これが松浦亜弥なら違って、圧倒的な個性を発揮し曲があとから着いてくるというような具合だ。これはアイドルのキャラクターに依存して曲を生み出すつんく♂というプロデューサーの特徴を活かしきれず結果それなりの曲しか出揃わず、アルバムとしては散漫な物になった。

グループでは比較や競争が必然であり、自ずとメンバーの個性も確立されやすいがソロ歌手ではそれが難しい。個人的にあややの癖の強さは苦手なのだが今回その個性の重要さを感じだ。

…ならミキティへの評価(ソロ向きでない)が正しかったのかいうと、そうではない。

ファンの間では美貴帝という愛称で恐れられるほど、およそアイドルらしからぬ無愛想で勝気なキャラクターをグループ内で確立できた。つまりデビューの順番が逆だったのだ。ソロ→グループではなく、グループ→ソロという流れが彼女にとって理想だった。再デビューするにしてもグループ円満離脱というのも重要なチャートだったし、それより前にやる気が底をついてしまったのも惜しいことだ。何よりミキティのグループの中でもすぐにそれと分かる癖の強さと爽やかさを兼ね備えた歌声、ビートに負けないリズム感の良さは魅力的で1小節歌うだけで曲を成り立たせる安定感がある。取り分けアップテンポでかっこいい系の曲とは相性が良くブギートレイン'03、会えない長い日曜日、le's do 大発見!、等はお気に入り。モー娘ならmy dear boyとかすごく格好いい。

https://youtu.be/wDp4SdacX5U

…と何だかんだ言いつつ個々の曲の出来はあながち悪くなくスルメ盤、隠れた名盤と言える出来となっている。正味つんく♂の創り出すファンキーな黒人由来の音楽とは相性があまり良くない気がする(入る事務所を間違えたんじゃ…ボソッ)。

https://youtu.be/5lzRjPucdQI