シェイプ・オブ・ウォーター(2017)


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パンズ・ラビリンスのギルモア・デル・トロ監督作。60年ぐらい前…アメリカとソ連が冷戦下の時代、アメリカの何らかの研究所で働く掃除婦の女が主人公で、そこに海から連れてきた謎の生物を研究してバイオテクノロジーかなんかでソ連を出し抜こうってアメリカが画策している所にソ連のスパイが来たり、掃除婦とその謎の生物の間に種族を越えた愛が芽生えたり…ぶっ飛んでるようで良く出来たラブロマンス。クッソ面白かった。

謎の生物は魚人のような姿をしていて神に割と近い能力を秘めていて治癒能力で相手を治すこともできる。パンズ・ラビリンスと同じくモンスターのデザインが相変わらず素晴らしい。生々しくて本当にこんなんいそうっていう説得力がある。パンズ・ラビリンスからグロ描写に対する拘りも相変わらずで、だからこそ架空の生物にこれだけのリアリティを注ぎ込めるのだろうな。それに加え今回はストーリーも滅茶苦茶良い。

海から来た謎の生物と人間の女が恋に落ちるというシンプルながらぶっ飛んだストーリーを安っぽくならずに成立させるために設定やその他の人間関係がよく練られている。序盤展開する登場人物の掘り下げにしても、随所に気の利いたジョークが挟まれていて飽きないし、後々全部物語の中で繋がってきて無駄がまったくない。最終的には悪役の研究所所長まで何故か好きになっていた(憎めないキャラとかでは全く無いし寧ろ怖い…)。それぞれに事情があり単純に悪人善人で描かれていない複雑な人間模様を無理なく見せてくれるのもこの作品の魅力だ。

人間の女が異種族に犯されるのは生理的嫌悪感を抱かんでもないが(個人的にヒロインはもっと美人が良かったけどそうすると人権団体が何かと煩いのかもしれない…)、家主の親父が謎の生物の能力でハゲを治してもらった喜びで彼らのセックスを見逃してくれるって様子なんか観ていて微笑ましい。そう。今作は凄惨な場面もあるがパンズ・ラビリンス程陰鬱でもないしどこか微笑ましいのだ。最後の方ミュージカルまで飛び出して馬鹿馬鹿しくて良かった。

ラストかき切られた首筋がエラになるのとか伏線の回収が綺麗すぎる。最初から最後まで不明瞭な所がなく怪物と人間の恋をロマンチックに描き切った名作。パンズ・ラビリンスの頃から着実な進歩を見せてくれた。この作品で完全に監督のファンになりました。