奈良の3人組(ギタボ、ギター、ドラム、ベース脱退済)ロックバンドyoctopolis(ex.ray)廃盤になった初期音源を集めたアルバム。
このバンドを聞いて思い起こさずに居られないのはsyrup16g。五十嵐に声がソックリだということ。音楽性もだいたい似たような感じ。ただシロップの場合、良くも悪くも五十嵐の圧倒的個性によって成り立っているが、このバンドはもっとバンド全体のダイナミズムを大切にしている感じ。特にギター谷本賢介の作り出す楽曲(このバンドボーカルとギターの両名が作曲を行う)はオリジナリティに満ちていて普遍的な魅力がある。
01.光の中に
ギターボーカル宮井慎介作。GRAPEVINEのようなボトムの効いた演奏が頼もしい。タイトルもバインっぽい。谷本氏のセルフライナーで同世代にこんな曲やるバンドいたんだと語っていたとおり、今どきのバンドには珍しい大人な雰囲気と風格を備えたバンドだと思う。
02.イノ
宮井作。ラフな印象の明るくポップなロックンロールナンバー。YouTubeで視聴した感じ渋めのミディアムナンバーばっかりでこういうのもあるのかと安心した楽曲。
03.12月
ギター谷本作。洋楽的で複雑な構成と演奏力に情緒豊かで鋭く繊細な感性が合わさり深いサウンドスケープを呼び覚ます名曲。セルフライナーを読むにこの曲は先ずメロディーと歌詞が浮かんで結構バッとできた曲らしい。バンドでジャムりながらじっくり作ったタイプの曲かなという印象だったので意外だった。
04.長い夢
宮井作。この曲は暗く揺らめくディレイ感がもろにシロップっぽい。with out〜って歌詞とか相当意識してそう。
05. Rune
宮井作。目眩のするような複雑な構成に光が刺すような爽やかで優しいサビが印象的でその後の
1寸先みたいだけっていう五十嵐っぽい暗いリフレインも魅力。この人は曲構成に感情の起伏やストーリー性を全部含ませてるなぁ。
6.下北沢賛歌
宮井作。シロップ、アート、バーガーナッズといった所謂下北系と呼ばれるバンドへのリスペクトを表明する楽曲か。速い曲を作らないとという思いで作った曲だとか。さっきの曲と打って変わって初見で分かりやすいキャッチーさが魅力か。
07.アパート
宮井作。アパートというタイトルからスピッツ、アートスクールといったギターポップ
系のバンドを想起してしまう。しかしこちらはダークで混沌としたどちらかと言えばノーベンバーズでありそうな曲。ビートが立っていいてダンサブルな感触すらある。
08.wanderer
宮井作。ダウニーやレディヘがやりそうなベースが引っ張る陰鬱で渋めな曲。ライブで化ける系か。
09.バイバイ
宮井作。この曲のみ2019年録音という事もあり1番グルーヴに纏まりがあるのを感じる。パッと聞いた感じ地味な印象だけど、バンドの優れた表現力が丁寧に刻まれていて聴き応え十分。トーンが抑えられたベースと同じテンポで刻むアルペジオが切なさを濁し出す。終始なってるシンセは彼岸の世界を演出してる。ラストのホーリーシューゲで昇天。