ダークナイト(2008)

クリストファー・ノーラン監督作。先ずジョーカーカッケーってのはあるけど、そこは敢えて触れないみんな語り尽くしてるし…。

とりあえずバットマンティム・バートン版)に限った話じゃないけど、あの時代の実写映画から凄まじい進化を感じた。どう撮ったら重々しさを速さを鋭さが客にリアルに伝わるのかっていうのが研究して計算され尽くしているなと思った。CG使いまくって映像美とか言ってる映画とは違う実写映画の正統進化を見た。

そう言う技術面だけでなく、精神面での進化…これは敢えて深化と表現したい。その深化も著しい。

そう感じたのは死刑囚と市民が船で人質に取られてどっちが先起爆スイッチ押すかってシーン。先ず結果を言うと死刑囚がスイッチ捨てて、市民もスイッチ押せないってオチなんだけどこれ凄く意外だよね。

だってこれ現実だったらどっちもソッコーで押してるよね?

これはリアリストぶった厨二病の意見でなく絶対現実そうなんだよ。いや確証ないけど経験論だよ。みんなそう思うはず…。問題は何故監督がそう描かなかったのかってこと。それは俺が思うに監督が映画において現実より人間の命が重いフィクションを作ってるってことなんだ。

 

…フィクションは大抵リアリティを追求するものだけど、なぜ誰もスイッチを押さなかったのか?それはただ面白い方に行ったっていう単純な物じゃない。もっとすごい…例えば戦国時代の常識は今と違うじゃん?そこには戦国時代のリアルがあるわけで…それと同じレベルでクリストファー・ノーランのリアルがあるんだよね。それを追求してる。

それって妄想じゃね?と思うけど、そういうチャチャを差し込む余地の無いほど完璧なフィクションを創り出したのがこの映画なんだよ。

これは今まで2通りあったリアリティを追求する、リアリティなんか無視して面白い方にただ転がすって造り手の方法論を超越したすごい表現だと思うんだ。

そこにダークナイトが尋常じゃない名作になり得た鍵があるんじゃないかと思う。

まぁ、簡単に言えば有り得ない状況を本当にしてしまう凄みというか、現実以上に現実なんだよこの作品は。