平成狸合戦ぽんぽこ(1994)

スタジオジブリ高畑勲監督作。

なんか見たことある気がするけど、ちゃんと見た事はなかった。高畑勲ほんま好き。開始1分くらいでもう夢中だった。多摩ニュータウンの開発を巡り住処を賭けた人間とタヌキの戦争って内容なんだけど、タヌキが人間並みの知能を誇り且つ変化能力がある動物界の上位存在として真剣に描かれてるのが面白い。お化けとか真剣に描くとチープになりかねないけど化かされる側の人間の反応がすごくリアルで怪談の神聖さみたいなのが保たれているんだよね。時代が良かったんだと思う。今より心霊番組とか多かったし、そういう物にマジだったからね。畏敬の念みたいなのが多少残ってた。その塩梅が絶妙で百鬼夜行を観た団地の親子反応なんか妙にリアルで気に入ってる。人間の記憶や認識の曖昧さと移ろいゆく情勢の中でタヌキという存在が上手いこと人間からの認知を避けてて、それが人間の超自然的な物への関心が失われる過程とリンクしてエモい。最期には感情移入しまくって大泣きしてしまった。

何よりこのハッピーなサムシングが堪らない。生きるのって楽しいよなー!…そういう当たり前のことを思い出させてくれる。このたぬき共が愛おしくて堪らない。かぐや姫の物語も神だったけど、万人ウケってことを考えたらこっちの方が上かもね。でも結局内容はどっちも生命賛歌だよね。93年、公開当初は社会問題に警笛を鳴らすこの作品はかなり毒を持って迎えられたと思うんだけど、しかし令和となった今となっちゃこの作品の風景も年々ノスタルジックな柔らかい手触りを増してきてると思う。…とは言うもののこういう事を続きてきたおかげで今、気温が36℃なんて事になってるんだよなぁ。山どころかこの地球に生命が住むことさえ困難になってきてる。果ては戦争でしょ?宮崎駿じゃないけど人間は一度滅びた方がいんじゃないかって気になるよ。…もう色々諦めてさ、楽になろうよ人間は。大麻とか解禁して、パーになって悟りの境地でも目指せばいいんじゃない?奪い合うことをやめてさ。生きとし生けるものいつかは死ぬんだから。ほんとイーロン・マスクはさっさと人類ならSNSを奪い取ってくれよ。

高畑勲の描く生命賛歌ってのは永遠に生きる事ではないんだよね。死を見つめて生きる事、動物なら当たり前にやってる事。それを忘れちゃってるんだよ。結局タヌキも人間に負けて殆ど死んじゃったけど、映画を見た人々の記憶の中で生きていると。それが生命の美しさだと思う。